「ねえ、なにか話を聞かせてよ」
君は話を聞くのは得意だけれど
自分のことは話さない
でも僕は君の話が聞きたい
君はおちゃらけたり話をそらしたり
ある日君はイライザの話をした
それは唐突に
ぽつりぽつりと話をした
そのときの君は
もう僕のことなんて見ていなかった
君の話すイライザは
きっと
ガーベラなんかが似合うような
素敵な女性だったのだろう
君と同じで
人の話を聞くのが仕事だ
彼女はいま、なにをしているのだろう
でも君は
それ以上彼女の話はしなかった
有能で無脳なイライザを
君は先生と呼んだ
君を導くのは
いつだって彼女だった
「ねえ、なにか話を聞かせてよ」
君はだんまり
過去も未来もない
そんな僕らに話すべきことなどない
なんとなく
僕は思うんだ
いつかきっと
君とイライザは
どこかでまた会えるって
いつかきっと
大きなリンゴのなる木の下で