『君に届け』を実家に置いてきました。(←マンガを置くスペースがないから)
なんだろうこの虚無感は……離れても変わらないと思っていたこの気持ち――でも、……でもっ!!
部屋にマンガ置くスペースは無いくせに、へんに心にスペース作っちゃったので、誰か埋めてください。
ビッキー・ホリディです。
あの……です、ね……実は、なんですけど……
いや、これ言ってもいいのかなあ……いやでも言いたいなあ……どうしよう……
……すみません、冒頭からしどろもどろで。あの、今日、ですね、
生まれて初めてスタバに行ってきました!!!
スタバです。スタバ。スタンダード・バディじゃなくて、スターバックスコーヒーのことです。なんだ、スタンダード・バディって。標準体型か。つまんねえうえに僕は華奢というか、スレンダーなほうが好きだわ。どうでもいいわ。どうせ縁なんてないんだし。
ほら、よく言われてるじゃないですか、スタバは注文がシャレヲツすぎて難しいと。
でも僕は普通のコーヒーを普通のサイズで飲みたかったので、そこまで苦労はしないだろうと。サイズの種類というか、呼び方も特殊だと聞いていましたが、要するに真ん中を選べばいいんだろうと、そう、思っていました。なので、「コーヒーのこのサイズをひとつ」と、真ん中のサイズを指差して言えばなんてことはない。ハッハッハ、スタバめ!なんとかマキアートとかなんとかプラペチーノとかレイ・ブラッドベリとか、そういうのを背伸びして注文する田舎者とは違うのだよ、僕は。僕は普通のコーヒーをブラックで飲むんだよ、ただそれだけなのだよ。どっかのバカなクソガキみたいにアル・パチーノとか、そういうのは頼まないんだよ。スタバめ!あんまり僕を舐めないでくれたまえ。
と、それはそれは勇ましく、レジのお姉さんの前に立ち、「ドリップコーヒーをひとつ」と。
「サイズはいかがいたしますか?」
僕はにやりとニヒルな笑みを浮かべ、そっと指をカウンターのメニューに置こうとした、そのときです。
サイズがっ……4種類……だとっ……!?
真ん中!真ん中!普通のサイズ!僕は普通のサイズでいいんだ!でも4種類だと真ん中がない!!くっ……!!
僕は腋にじんわりと油が滲むような感覚がし、ギリっと下唇を噛みました。そして、それはまるで次の次の次の手で詰まれることを察し、南無三、もはやここまでと、「参りました」と頭を下げる棋士のごとく、声を絞り出し、言いました。
「普通の……サイズは、どれ……ですか……?」
「こちらの『Tall』が一般的なサイズになっております」
「じゃあ、それを……ひとつください……」
屈辱に震える指で小銭を出して、320円をそっとカウンターに置きました。やれやれ、スタバめ。コーヒーひとつでこんなにも神経を使うとは。チクショウ、僕もタカをくくっていた。でもこれでやっとコーヒーが飲める。
……と思いきや、
「あの……メニューの価格は税抜き価格なので――」
ガッデム!!ジーザス・クライスト!!サノバビッチ!!
僕はそっと消費税分の数十円をカウンターに置きました。これでっ!いいんだろ!!満足なんだろ!!笑いたきゃ笑えよ!!だから早くコーヒーをだな……
「カップは紙のタンブラーかマグカップかお選びいただけますが」
はあ?ここで飲むつってんだからそんなのどっちでもいいわ!どうでもいいわ!インスタグラムのSnowで加工された女子会の写真くらいどうでもいいわ!!
「……じゃあ……紙のほうで……」
よしこれでやっとコーヒーが飲める……なんだか緊張で喉が渇いてきたぞ……むしろアイスティーとかそういうのがいまはむしろ飲みたい気分だ……
やっとの思いでコーヒーを受け取り、席に座りました。さて、肝心のコーヒーの味は……わざわざ全席禁煙でコーヒーの香りが云々言ってるなら、それ相応の味じゃなきゃ僕は許さないぞ……!こちとらヘビースモーカーだったもんでスタバに入れなかったんだからな。これで馬のションベンみたいなものを出してきたら、そんときは、次は店じゃなくて法廷で会うことになるからな!!
僕はそれはそれは勇ましく、タンブラーを手に取り、口をつけました。
熱っ
このやろう……この期に及んでそれか!蓋がしてあって、猫舌の僕にはとても飲めないじゃないか!!
悔しいやら情けないやらで、僕はタンブラーの蓋を外してフーフーしながら飲みました。これならマグカップのほうがよかった……
っていうかなんでタンブラーかマグカップか選ばせるんだ?マグカップでいいじゃん!どうせ店内で飲むんだし!どっかのアメリカ西海岸に憧れてる底の浅いペラッペラの、MEN'S NON-NOとかでモテテクを熱心に読んでいるようなゴミみたいなクソガキじゃねーんだよ、なーにが西海岸だ。お前なんかどうせお台場の埋め立てられた海岸でサクマドロップスみたいなあまーい言葉、それもどっかのマンガやら雑誌やらからパクってきたプレパラートのごとく薄っぺらい言葉を女の子に囁くくらいしかできないくせに、なーにが西海岸だ。溺れ死ね!!
と思っていたら、Twitterで「紙のタンブラーなら飲んでいる途中でも店を出られるからじゃない?」と、友人からリプライが来て、なるほどと思いました。そして、そんなに忙しいならコーヒー飲んでねえでさっさと用事片付けろ!プライオリティーが狂いすぎてんだろゴミが!と思いました。
で、さて、肝心の味ですが……
あ、おいしい……
酸味は控えめでビターな感じがとてもいい。これは、確かに……おいしい……
隣の席が女子二人で、綾野剛はタイプじゃないだの、あのイケメン俳優はバラエティに向いてないだのと、黙れブスとしか言いようのない会話をしていて、本でも読もうかと思っていた僕からすれば非常に耳障りだったので、イヤフォンをつけ、キース・ジャレットを流して本を開きました。
ふと、もらったレシートを見ると、ドリップコーヒーは2杯目以降は100円で買えるらしく、これは長居するのにはもってこいだなと思いました。なるほど、スタバめ。いいとこあんじゃねえか。
まあ、おかわりはしませんでしたけど。2時間くらい読書して店を出ました。
そんなスタバ体験記。たぶんまた行くと思います。コーヒーはおいしかったし……