コバルトノートを探して欲しいと彼女は言った
俺は固茹で卵の殻を剥いていた
それにはね
わたしの知りたいすべてが書かれているの
「たとえば」
「フリーメイソンのメンバーのリストとか
昨日隣の部屋でヤッていたセックスで
何回体位を変えたのかとか」
俺は固茹で卵をビールで流し込んだ
そしてソファに座って
交響曲を聴いた
陰謀論には夢がある
しかし夢は
夢のまま終わらせたほうがいいときもある
やれやれ
今夜
彼女を抱く気にはなれなかった
コバルトノートが
もし本当にあったなら
俺は一ページ使って
クソッタレ
と書き殴るだろう
街はまだ眠らない
なにが起こるかはわからない
あるいはなにも起きやしないかもしれない
彼女を失ったいま
もうどうでもいいことだ