最後にルルを見たのはいつのことだろう。
今日みたいな雨の日だった気もするし、よく晴れた日曜日だったような気もする。
とにかく、もうルルはもういない。
ルルのことを考えるときは決まってひとりで酒を飲んでいるときで、それも気の滅入る酔い方をしているときだ。
気晴らしに飲んでいるはずがどんどん沈んでいって、そのくせ頭は冴えていくような、そんな酔い方をしているときだ。酔っ払って寝ちまおうと思っても、眠気はやってこず、流しているアルバムの曲が延々とリピートし続けている。
おれは舌打ちをして飲み始めてから57本目の煙草を灰皿に突っ込んだ。吸い殻が何本かこぼれ落ちた。
酒を作ろうと立ち上がるとよろけてテーブルにぶつかって、空き缶が床に落ちた。それを蹴っ飛ばしてカティーサークの水割りを作る。
戻ってくると、ルルが座っていた。
「あなた、まだこんなことをしているの」
「もう、これっきりだよ」
「嘘。これからも、でしょ」
「先のことなんてわからない」
ルルはため息をついた。時計を見ると午前4時だった。
「じゃあね」
ルルは玄関から出ていった……
おれはルルに電話をした。訝しげな声色で、ルルは応答した。
「もしもし、おれだよ」
「どうしたの、こんな時間に」
受話口の向こうから声がする。誰からだよこんな時間に。昔の彼よ。なんで。わからないわ。
「もしもし」
「なにか用事?」
「いや……なんていうか……」
「なにもないなら切るわよ。朝早いから」
「そっか……ごめん」
「みんながみんな、あんたみたいな人間じゃないんだから」
おれはなにも言えなかった。
「わたしだって、もうあんたとは関係ないんだから」
「わかったよ、ごめん……その……おやすみ」
「うん、じゃあね」
おれは水割りの入ったグラスを壁に投げつけた。グラスが粉々になったのを見ても、気は晴れなかった。
ジャック・ダニエルのボトルを持ってきて、そのまま飲んだ。畜生。
さらに飲んだ。畜生。
畜生、畜生、畜生……
仰向けになって見た天井はグルグルと反時計回りに回っていて、それを見ているうちに陽が昇るころには、おれだってまともな人間になっているはずだという気がしてきた。
いつものように、誰にでも平等に、おれにだって分け隔てなく、太陽さえ昇ってくれれば。
それまでは飲み続けよう。
バイバイ、ルル。