女を一人、連れ込むことに成功した。
おれは彼女を座らせると、戸棚からI.W.ハーパーを出した。「ソーダで割って」と言われたのでその通りにした。おれはロックで飲むことにした。
それまでにもおれたちはしこたま呑んでいた。お互いに呂律が回っておらず、口説き文句も二、三回言い直すような始末だった。ふらつく足で彼女にウイスキー・ソーダを持っていった。虚ろな目でそれをじっと見つめ、おれが自分のグラスに口をつけると、彼女は一気に半分ほど飲んだ。
おれはコンポで『ホテル・カリフォルニア』を流した。それから、彼女の肩を抱き寄せた。彼女は素直に身を任せてきた。彼女の髪をわけて、おれは唇に軽くキスをした。
一回。二回。三回。
彼女の身体が火照っているのがわかった。四回目は舌を入れてみた。彼女はため息のように、大きく喘いだ。その吐息はウイスキー臭く、いかんと思ったのも束の間、おれは唇を合わせたままゲロを吐いた。
んっ、と小さく声を漏らし、彼女はゲロを全部受け止めた。そして、信じられないことに、ごっくんとそれを飲んだ。
きゅうりが萎れるのがわかった。おれはまじまじと彼女の顔を見つめた。とろんとした目はあさっての方を向いており、口元からはちょこっとゲロが垂れていた。
それを見るとまた吐き気がしてきて、おれは灰皿に向かって吐いた。もちろん溢れた。きたなあい、なんて彼女はケラケラと笑っている。笑っていたかと思ったら彼女までゲロを吐きやがった。絨毯に思いっきり酒臭いゲロをぶちまけた。たぶんこれはおれのゲロなんだろう。余計なことを考えたせいで、おれも吐いた。それを見てまた彼女が吐いた。
吐けば吐くほど、脳みそが痺れてくるような感じがして、まぶたがやけに重くなってくる。ゲロを吐いたせいで体内のアルコール濃度が高くなったような気がした。
彼女がヨダレを垂らしながらおれに寄り添ってきた。おれはそれを胸で受け止め、そのままなし崩しにゲロまみれの床に二人して倒れ込んだ。服が汚れるな、なんて思ったりもしたが、もう起き上がれることはなかった。
そしてそのまま眠りについた。
翌朝、頭痛とともに目を覚まし、部屋がゲロの臭いで充満していることがわかると、おれはその場に吐いた。寝ている彼女の顔にぶちまけた。
ゲロまみれの彼女の顔が妙におかしくて、おれは大声で笑った。